2017年4月9日(日)にアップリンクで行なわれた『自由を手にするその日まで』完成披露上映会。
上映終了後に、天野友二朗監督、キャストのみやびさん、宮内杏子さん、鵜飼祥己さん、吉村きりをさん、工藤杏子さん、庄大地さん、真柳美苗さんが登壇し、トークショーが行なわれました。
トークショーは上映終了後ということもあって、作品の裏側や撮影秘話、登場人物について詳細に語られる内容になりましたので、ネタバレにつながる部分をカットして前・後編と二回に分けてお届けいたします。
―『自由を手にするその日まで』トークショー ―
天野友二朗監督(以下、天野監督)
まずタイトル『自由を手にするその日まで』についてですが、便宜上長編復讐劇をうたっているんですがあくまでも”便宜上”です。
タイトルに込められた思いとしては、色々と不条理なことがある現代社会の中で、どう自由というものを見出していくのかということがこの作品の本質となっています。
主人公の”彼女”にとっての自由とはいったいなんなのか、現代社会における自由とはいったいなんなのかということにたどりついていく構成になっています。
(海外上映時の)英語タイトルとして『Symmetry』(シンメトリー/対称)としています。
台詞によって自分の思いを相手に投げかけていくという外交的なものではなくて、自分の中でおきえている内面の戦いをモノローグで語っていることが”彼女”にとっての真実であって台詞では、「ハイ」とか「そうですね」しか言わないんですが、モノローグの中では闘志に燃えている。
”表の顔”と”裏の顔”を”対称的”に使い分けて生きていかざるを得ない状況で生きている。一人の人物の中に存在する”表”と”裏”という”対称性”という意味が一つあります。
そしてもう一つ、”彼女”というキャラクターに対して、”彼”というキャラクター。”加害者”と”被害者”という”線対称”性という意味も含まれています。
本作のヒロインの”彼女”には名前がありません。
では、なぜ名前がないのかについて、”彼女”を演じたみやびさんお願いします。
みやびさん(彼女役)
最初に台本もらったときは去年の一月。まだその時はキャスティング決定ではなかったんですが、台本を読ませていただいたときに、役名に”彼女”と書いてありました。
不思議な台本だなあと思ったんで、監督に聞いてみたところ「名前をつけていないことに意味がある」と、それは彼女という主人公が特別な人ではなくて、職場だったり、家族だったり、自分の恋人だったりとか、あるいは自分自身だったりとか、どこにでも存在しうる不特定多数の象徴だと聞きまして、なるほどなぁと思いました。
そんな”彼女”ですけど、共感できる人もいれば、できない人もいるかも知れないという、二極に分かれるんじゃないかなと。(私も)半分はものすごく共感できて、半面ついていけないところまで彼女がどんどん暴走してしまうというところがあって。
ラストがショッキングなだけに、あまり役を正当化したら良くないなと思いました。
役者は役をもらうと自分に寄せたり、可愛がりすぎてしまったりすると思うんですが、”彼女”役については寄せすぎないほうがいいなと思って。そんなことに気を付けて演じさせていただきました。
天野監督 当初は作り手として、(彼女という役に)感情移入して欲しいと思っていましたが、みやびさんとディスカッションを続けていく中で、みやびさんが第三者的な、中立的な立場で彼女というキャラクターを淡々と俯瞰していて、じゃあそれを大事にして、観客に感情移入することを目的とすることではなく、共感あるいは反感という解釈の余地を残すような、淡々とした語り口を選択しました。
みやびさん ディスカッションを半年の中でかなりできる現場でした。
天野監督 最初にあったときに3時間半ぶっ続けで話しましたね。
~ 作品終盤を含んだシーンの解説を挟んで ~
天野監督 映画は暗くて重いんですけれども、風呂場での(血糊を伴う)シーンで「みやびさんハイチーズ!」と言ってピースした写真を撮影しました(笑)
みやびさん 初、血糊シーン撮影で興奮しちゃって、スゴイ!こんなにリアルなんですねって言いながら撮ってましたね(笑)
結構、和気あいあいとした現場ではありました。
天野監督 では、続いてサブヒロインの宮内さんお願いします。
宮内杏子さん(以下、宮内さん)
関口久美子(役)はかなりヒロインに対して、直接的というか ヒロインにとっての大切な人、彼というを通していやがらせをしてしまうキャラクター。
台詞は普段(自分だったら)吐かないような言葉だったりしたので、イヤな女を演じられることが快感でした。
(映画に中のような)こんなに怖い世界では生きていないので、本当に良かったなって思ってます。
撮影中の印象的なシーンは、自分の拷問シーンでした。監督が作った拷問器具を実際につけて撮影したんですが…
天野監督 (拷問器具名称は)異端者のフォーク!
宮内さん スタジオの風呂場のシーンで、(小道具で使った)豚の肝臓のにおいもひどかったですし、(拷問器具)”異端者のフォーク”もぐっと食い込んできて痛みは忘れられないものがありますし、すごい経験をしたと思っています。
天野監督 あのシーンを撮影するために、肉のハナマサまで買い出しにいってレジに大量の豚の肝臓と骨を出し(笑)真夏の中、それをもって列車の中で抱えながら家に帰ったという仕事をしました(笑)
病院で事務職を務める24歳の新人の女性社員。
彼女は、職場でハラスメント受け、精神を病む。
そんな中、冷え切っていた彼との関係が破綻する。
やがて彼女は、報復のために、職員の抹殺を決意。
サイエンスの知識を駆使し、綿密な復讐計画を立案し、
復讐代行業者に依頼するが、思わぬ妨害者が立ちはだかる。
果たして、復讐の先に彼女を待ち受ける運命とは。
自己資金とクラウドファンディングを活用して予算確保し、土日を活用して約半年かけて隔週で撮影が行われた。
また、監督自らがオーケストラ所属経験による絶対音感を活かし、劇中の弦楽オーケストラ曲も作曲。
クラウドファンディングには、カンヌ国際映画祭受賞監督の深田晃司監督も出資。
「独立映画鍋」会員の天野友二朗監督の初監督作品。
広瀬慎一、庄大地、藤村忠生、小野孝弘、吉村きりを、水津亜子、藤井美玲、
工藤杏子、木村梨乃、鵜飼祥己、滝けい子、藤田慎太郎、藤原絵里、一高由佳、
上田うた、見里瑞穂、真柳美苗、保土田智之、佐々木勝己、井坂優介、天野友二朗、
冨田智
監督・脚本: 天野友二朗
作曲: 天野友二朗
演奏: 新日本BGMフィルハーモニー管弦楽団、渡辺裕太、吹野クワガタ、加藤裕一
特殊造型協力: ソイチウム、はきだめ造型2016年/日本/112分/サスペンス
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