込み入った事情を抱えた”複雑”すぎる男女三角ラブストーリー『サイコロマンティック』。
2017年6月5日に公開を控えている本作の製作者である柴田航監督は現在26歳。
ヌーベルバーグを理想に掲げ、海外から国際映画祭からの逆輸入を目指すその思いについて、語っていただきました。
―― 映画製作を目指すきっかけは?
元々何か表現する職業につきたいというのが物心ついた時からあって、12歳の時に映画をしっかりと意識して観始め、15歳頃にトリフォーやゴダールの作品を観て特に強く映画監督になりたいなと思いました。
ちょうどその頃大衆文化に染まっていく同年代の人たちを見て、ある種の気持ち悪さを感じている時だったこともあって、ヌーベルバーグが心に刺さりました。
―― 直接映画監督を目指した理由
アメリカの大学で技術的なことではなく、映画論について学びました。
帰国後に映画学校に行こうとも思ったんですが、ある映画監督の先輩が映画学校にいかず作品を作り評価されていて、何色にも染まらない姿が格好いいなと。
”独学”という”反抗”みたいなものです。
――『サイコロマンティック』を作ったきっかけ
何か伝えるために脚本を書いたわけではなくて、感じるままに書いていきました。
だから(直接的に)僕に事件事故が起こったというわけではないです。
一本目ということで、この作品は名刺代わりになるものなので、僕がどういう作品を作る人間なのかわかりやすいように、男女の三角関係を描こうと思いました。
僕は三角じゃない人間関係って無いと思うんです。
たとえば僕がどこかの女の子を好きであっても、他の誰かも多分かも知れないわけで、もしかすると、更に他の誰かも僕のことを気に入ってくれているかも知れない。
恋愛って、そもそも三角関係、もしくは三角以上の関係であってしかるべき何だと思います。
『サイコロマンティック』を監督したのが24歳でした。
これまで短編も撮ったことが無かったんですが、ちょうどグザヴィエ・ドラン監督が話題になってきたころで、触発されて。
映画監督って基本的に、年齢が上の方が多かったので、年齢を重ねないとできないものなんじゃないかっていう概念を破りたかったことと、1990年代生まれの監督で、少なくとも短編撮っている人は、いくらでもいるなと。
彼らを一発で出し抜いてやりたいという気持ちも手伝って、長編としての作品を、この24歳というタイミングで作ろうと思いました。
―― 演出について
監督にしかわからないようなこだわりで、何回も撮りなおしするのが好きじゃないんです。
僕自体は特別演技を勉強してきたわけではないし、何回も演技を理由に撮り直しをしていただく権利もないと思うので、俳優の皆さんにはできるだけ好きに演じてもらいました。
―― 国際映画祭への出品について
そもそも海外を意識していない人が多いと思うんですよ、たとえば三大映画祭に記念に出すだけで、あと全部国内とか。なんでそうなってしまったのかと。
ロカルノ映画祭(スイス)とかロッテルダム映画祭(オランダ)とかテッサロニキ映画祭(ギリシャ)とか、たくさん権威があって、素晴らしい審査員や素晴らしい運営の方がいる映画祭がたくさんあるんですけど、そこで評価されるより、国内の映画祭で入選したほうが国内のお客さんが集まるというような流れに、僕は不条理な事が起きていると感じているんです。
本来、人に良い映画を見てもらうために、海外のちゃんと名のある映画祭に出す。という然るべき行動をしている僕の方が、珍しい変わり者になってしまうと思うんですよ。
キプロス映画祭に出品したのは、キプロス最大の映画祭であること、そしてテッサロニキ映画祭と提携していることがわかり、権威ある映画祭だと知ったからなんです。
僕はそういったところで入選し評価を受けることによって、僕にとっての不条理な状況を覆してやりたいなと。
僕の作品が海外から逆輸入されて、「なんだ国内では評価されていないけれども、こんなスゴイ奴がいたんだ」と思わせたいんです。
―― 映画で得たいものは
”ムーブメント”です。
ヌーベルバーグが出現したことによって、大衆的なアメリカハリウッド映画だけが良いものとされたのを覆したのです。
日本人でムーブメントをおこしている先人として尊敬しているのは、塚本晋也監督、大島渚監督です。
僕も、彼等が起こしてきたようなムーブメントの一翼を担えるような存在になり、国際的に評価を受ける映画監督になるのが理想の姿です。
―― 今後の展望
現在は長編二作品目として、映画界に関わる様々な人々を描いた群像劇”The Reminiscence of Our Revolution”が公開待機中なんですが、
お金さえあれば一年に何本でも撮りたいですし、アイデアもあります。
これからもコンスタントに海外の映画祭に作品を出し、逆輸入してもらえるようになりたいと思っています。
人生は短いものだと思っているので、できるだけ多くの映画を見て、できるだけ多くの本を読み、できるだけ多くの音楽を聴いてから死にたいですね。
余談ですが…
柴田監督(写真:左)へのインタビューは、アップリンクに隣接するアップリンクカフェで行ないました。
待ち合わせていた柴田監督と劇場側の入り口から入るや、監督の口から出たのが「主演が、そこにいます…」と。
何のことやらと思い、監督の指差した方向を見れば、立っていたのは『サイコロマンティック』で主役の翼を演じた品田誠さん(写真:右)。
もしや狙った行動かと思いきや、たまたま渋谷で撮影をしていて、雨が降ってきたので早目に終わったので、映画を観るために来ていたんだそう。
前回ご紹介したメッセージや写真も、雨が降っていなければ、実現していなかったことを考えると、この作品には見えない力があるのかも知れません。
6月5日の上映会でも、来場何か起こるかも!?